文献管理ソフト Zotero ~紹介編~

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文献管理ソフトというと、無料のものだとMendeleyやReadCubeがメジャーですが、その他にもZoteroというソフトがあります。これまでのところ、Zoteroが私の使い方に一番しっくりきているのですが日本語での解説が少ないので、ここで紹介しようと思います。

なお、この紹介記事はLaTeX&BibTeXのヘビーユーザー視点で書かれており、ある程度文献管理ソフトの役割については理解している読者を想定しています。したがってMS Wordとの連携についてや、文献管理ソフトとは何か・なぜ必要なのか、といったことについては説明していませんのでご了承ください。

はじめに

仕事柄、インターネットで文献を収集して、整理し、適切に引用する、という作業に多くの時間を費やします。ですから、この作業を効率化してくれる文献管理ソフトは必需品で、これまではMendeleyやReadCubeを利用していました。そんな中、最近使い始めて気に入っているのがZoteroです。

それぞれのソフトに一長一短あるので、どれを選ぶかは各人の好みの問題だと思います。私の場合、次のような要望がありました。

  • 論文をはじめ、プレゼンファイル等も簡単にインポートできる
  • 論文誌のサイトから文献情報とPDFファイルをワンタッチで保存できる
  • タグ付け管理できる
  • BibTeXファイルを出力できる
  • PDFをDropbox上に保存できる

ReadCubeでは、私が利用するサイトでPDFのダウンロードができず、無料版ではタグ付けにも対応していません。Mendeleyは文献情報を正しく読み取れなかったり、文献情報が数式や非ascii文字を含む場合に正しくエスケープできなかったりして、結局bibファイルやbblファイルを手で修正して対応することが多々ありました。また、iPadのPDFビューアからも閲覧したいので(iPad版Mendeleyのビューアは貧弱)、注釈付きPDFをDropboxで管理したいのですが、Mendeleyのストレージにしか保存できないのも減点ポイントでした。

Zoteroは無料ソフトにも関わらず、上に挙げた要望を満たしてくれることがわかりました。私以外にも似たような要望をお持ちの方が居るかもしれませんが、このソフトはMendeleyなどと比べると日本語の解説が少ないようなので、ここで紹介しようと思います。 なお、ZoteroにはFirefoxのアドオンとして動作するものとスタンドアロン版がありますが、使ったことのあるスタンドアロン版に限ってお話します(執筆時点でver.5.0)かつてはFirefoxのアドオンとして動作するものとスタンドアロン版がありましたが、執筆時点で最新のver 5からスタンドアロン版のみとなったようです(2017/09/27修正)。

Zoteroの特徴

Zotero単体でも文献管理の基本的な機能は揃っていますが、third-partyのアドオンで機能を追加できることが大きな強みです。実際、私がMendeleyやReadCubeに抱いていた不満の幾つかが、Zoteroではアドオンによって解決されています。そのため、初期設定ではやや手間がかかるとはいえますが、一度安定して使い始めると非常に使い勝手が良いです。

その他に、以下のような特徴があります(一部は本体でなくアドオンによって実現されます):

ブラウザからインポートできるコンテンツの種類が多い

文献のページから文献情報と(利用可能なら)PDFをダウンロードできるできるのはもちろんのこと、Amazonのページから書籍情報をインポートするのもプレゼンファイルをインポートするのもクリック一つです。また、一番良く使う論文誌のサイトからの文献情報やPDFの取り込みも、他のソフトだと正しく取り込めないことがしばしば。まともに使えるサイトが限られていることもあります。Zoteroは、私が使った範囲ではほぼ完璧に取り込んでくれました。Captchaに引っかかるなどPDFのダウンロードに失敗することは時々ありますが、その場合にあとからPDFを追加する作業もZoteroが一番ラクにできました。

BibTeXでエクスポートする時に欧文や数式をエスケープできる

しばしば著者名に欧文が含まれたりタイトルに数式が含まれたりするわけですが、BibTeXにエクスポートする時にはそれらをきちんとLaTeX形式でエスケープしてくれます。なお、数式については数式を囲む$とドルマークを区別できないという理由で、デフォルトではドルマークと見なすような動作をします。これは設定変更だけではどうにもならないのですが、ファイル単位で特別なタグ #LaTeX を付けることで$をエスケープしなくなります。

PDFをDropboxに保存できる

MendeleyにもPDFのリネーム機能があるのでこれを使ってDropboxに保存できます。しかし、Zoteroで実現しているのはMendeleyがやっていることと少し異なります。

Mendeleyは管理下にあるPDFファイルを全て独自のオンラインストレージに保存します。リネーム機能は、このコピーを作成するものです。そのため、リネーム機能で作成されたコピーに注釈をつけても、Mendeleyから開けるのは注釈のついていないオリジナルの方になります。

一方、Zoteroのリネーム機能は、名前を付けて整理したPDFファイルそのものをZoteroの管理下に置きます。そのため、PDFをDropboxに置いておいてiPadのPDFビューアから注釈を付けると、再びPCのZoteroから開いた時に注釈付きのものが開けます。

柔軟な検索機能と検索条件の保存

Zoteroは文献情報やタグに基づいた非常に柔軟な検索機能を有しています。PDFファイルの本文から検索することも可能です。また、検索条件を保存しておくことで、動的に更新される文献コレクションとして利用することもできます。

インストール方法

公式サイト https://www.zotero.org/ からダウンロードしてインストールするだけです。Firefoxをお使いの場合はわかりませんが、他のブラウザを使っている人は、Standalone版アプリ「Zotero # for *」(#はバージョン、*はOS)をインストールした上で、ウェブサイトから文献情報を取り込むブラウザアドイン「Zotero Connector」をインストールしましょう。本記事執筆時点での最新版はZotero 5.0です。

おわりに

ここまでの作業で、文献情報の高精度な取り込みや柔軟な検索機能は利用可能ですが、既に述べたように、Zoteroはアドオンを追加することで様々な機能を実現できます。特にBibTeXエクスポートの柔軟性やPDFのリネーム機能はアドオンが担っています。次回の記事では、主な設定項目、必須のアドオンとその設定について説明します。